代表

 ヒロ訪問看護ステーションの創設に携わらせていただきました西畑です。人は皆、一人では生きられません。一人暮らしの方も食べものを買ったりする時に誰かと関わったり、年金などの受け取りに行政の人と接したり、何らかの形で誰かと関わっています。

 ヒロ訪問看護ステーションでは、『人と人』、『訪問場所と地域』、『過去(未来)と現在』といった、関わる・繋がるを大切にしていきたいと思っております。時間や場所、そして人が縦糸と横糸として繋がっていくことで利用者さんの人生にさらなる彩(いろど)りある人生織物を増やせたら、利用者さんはもとより、私たち職員ももちろん楽しいと考えております。

 利用者さんを第一に。次に家族の方を。在宅医療は楽しいものばかりではないと思います。家族だからこそ葛藤があったり、分かりあえ過ぎる部分があったりします。私たち職員が訪問することで、両名が在宅でよかったと感じてもらえる訪問になるよう、利用者さん、ご家族、職員が繋がって、人生という縦糸と横糸の織物を完成に進められたらと願っています。

ヒロ訪問看護ステーション
代表 西畑 毅

はじめの一歩

患者さん夫婦

 私は以前、大学病院で勤務をしていました。交通事故、やけど、骨折、腹部臓器の損傷、そして脳血管疾患など様々な種類の診断名で入院する患者さんを看させていただきました。

 そんな中、プライマリー看護師となった一人の高齢女性がいました。老夫婦二人暮らし。子供達も独立し、近くには住んでおらず、まさに二人で支え合って生きている夫婦でした。

 その女性は脳内出血で入院し、経口挿管され人工呼吸器にて呼吸管理となり、すぐに手術を行いました。

 搬送された日から毎日、ご主人はお見舞いに来てくださり、手をさすったり、声をかけたり。女性の生命力とご主人の想いが通じ、日に日に回復していきました。早期経腸栄養、早期リハビリ、ベッドの頭部挙上による覚醒と循環動態の安定化。人工呼吸管理されている時は呼吸補助筋のリハビリも行い、先輩の助言や周りの職員のおかげでほとんどの管が抜けた時、「退院」「リハビリ転院」と言った話が出て来ました。

 入院前までは女性が料理や洗濯など家事をしていたようですが、これからはそうもいかない、自宅に退院しても日常生活や身体の事で何らかの心配事があります。ご主人だっていつまでも元気ではないはずです。

​ 何とか歩けるまで回復した女性の手を取り、廊下を歩行リハビリする老夫婦の後姿を見て、私は考えが変わりました。​

 それまでは今、目の前で起こっている事に目を向けていましたが、その時からは、転院後、退院後の生活につながるような看護をしなくてはと考えるようになりました。

 ほとんどの患者さんは自宅を目指します。自宅に向かうためには何をしなければならないのか?患者さんたちと話すことが好きだったので情報収集は積極的にしました。世間話から家の状態や家族環境を聞いたりし、最善策を思案します。徐々に在宅看護に興味を持ち、それぞれの患者さんに合った退院指導につながっていきました。

 「これなら家に帰ってもなんとかやっていけるよ」そう言って退院された時は表では良かったねと落ち着いた様子で伝えましたが、心の中では大きなガッツポーズです。病院の玄関先に見送った時は喜ばしい事なのに、さみしく感じることもありました。​

 人は必ず亡くなります。けれど、死に向かって生きているのではないと思います。死んでおしまいなら、その後に思い出話もないし、また会いたいとも思われないでしょう。

患者さん

 日々生きていく中で色々な人と関わり、楽しかったり、辛かったり、おかしかったり、悲しかったり。そんな思いを繰り返し年を経ていくのだと思います。ある日、そうやって積み重ねていくのは織物みたいだと思いました。一人で積み重ねるのだと積み木のようですが、他の人とも関わりながらということであれば​織物ではないかと思いました。

 現実ではないので、その織物を見ることはできません。人生の織物をそれぞれの人が作っていく中、在宅において、その人らしさの作品制作で私も少しお手伝いできたらと思っています。

 あの時、老夫婦が歩行リハビリをしていなければ。そして、あの時、支えあう後ろ姿を見ていなければ。​在宅看護に心は向かっていなかったかも知れません。 

 ​最後までお読みいただきありがとうございました。

お気軽にお問い合わせください03-5946-6958受付時間 9:00 - 18:00 [ 事務平日、訪問土日・祝日可 ]

お問い合わせはこちら お気軽にお問い合わせください